2028年4月1日から、従業員50人未満の事業場でもストレスチェックの実施が義務になります(施行日・期限などの制度の詳細は「ストレスチェック義務化はいつから?」で解説しています)。
とはいえ、産業医のいない会社では「実際に何を、どの順番でやればいいのか」が分かりにくいのではないでしょうか。
本記事では、ストレスチェックの実施手順を7つのステップに整理し、50人未満の会社がつまずきやすい4つのポイントと対策を産業医がまとめました。
ストレスチェックの流れ——7つのステップ
ストレスチェックは、次の7ステップで1サイクル(年1回)です。
| STEP 1 方針の表明 |
会社として「ストレスチェックを実施する」ことを決め、従業員に周知する。実施時期・体制・結果の取り扱いを社内ルール(実施規程)として文書化する |
|---|---|
| STEP 2 体制づくり |
実施者(医師・保健師等の有資格者)と実施事務従事者(案内・回収などの事務担当。人事権を持つ人は不可)を決める。外部委託も可能 |
| STEP 3 実施 |
質問票(標準57項目または簡略版23項目)に従業員が回答する。紙でもオンラインでも可 |
| STEP 4 結果通知 |
結果は実施者から本人へ直接通知する。本人の同意なく会社が結果を見ることはできない |
| STEP 5 高ストレス者の面接指導 |
高ストレス者と判定された従業員から申出があれば、医師による面接指導を遅滞なく(おおむね1か月以内に)実施する |
| STEP 6 就業上の措置 |
面接指導をした医師から意見を聴き、必要に応じて労働時間の短縮・配置転換などの措置を行う |
| STEP 7 集団分析 |
部署ごとの傾向を分析し、職場環境の改善につなげる(現在は努力義務)。記録は5年間保存する |
ステップだけ見ると多く感じますが、実施者を外部に委託すれば、会社側の実務は次の3つに絞られます。
- 規程を決める(STEP 1)
- 対象者リストを渡して案内する(STEP 2〜3)
- 医師の意見を聴いて対応する(STEP 6)
最重要ポイント——結果の取り扱いと個人情報
ストレスチェックの結果は、健康情報の中でも特に取り扱いに注意が必要な情報です。運用を設計する前に、次のルールを押さえてください。
「誰が高ストレスか」を会社側が本人の同意なく知ることはできません。また、面接指導を申し出たことを理由とする不利益な取り扱い(解雇・降格など)は禁止されています。この線引きを誤ると、制度への信頼が崩れて誰も正直に回答しなくなり、検査そのものが無意味になります。
50人未満の会社がつまずく4つのポイント
ポイント1:実施者(有資格者)がいない
50人未満の会社には産業医の選任義務がないため、ほとんどの会社は社内に実施者となれる医師・保健師がいません。外部の医師・産業保健サービスに委託するのが現実的な選択肢になります。
オンライン完結型のストレスチェックサービスも増えており、検査の実施だけなら1人あたり数百円程度から委託できます。
ポイント2:高ストレス者が出たときの「面接指導する医師」がいない
ここが最大の落とし穴です。検査だけを安価に外部委託しても、高ストレス者から申出があったときに面接指導をしてくれる医師を確保していなければ、義務を果たせません。
「検査はしたが、その先の受け皿がない」という状態が、50人未満の会社で最も起こりやすいつまずきです。スポットで医師に依頼する方法もありますが、1件ごとの手配の手間と費用がかかります。
高ストレス者への備えは「出てから考える」では間に合いません。厚生労働省の資料でも、受検者に占める高ストレス者の割合は大半の事業場で5〜20%とされており、一定数は必ず出る前提で、面接指導を担当する医師を最初から決めておく必要があります。
ポイント3:結果を活かす体制がない
検査をして終わり、では投資が無駄になります。集団分析で「どの部署に負荷が偏っているか」を把握し、働き方や人員配置の改善につなげてはじめて、休職・離職の予防という本来の効果が出ます。
相談できる専門家が継続的に関わっているかどうかで、ここの実効性が大きく変わります。
なお、令和6年の労働安全衛生調査(実態調査)によると、ストレスチェックを実施した事業所の75.4%が結果の集団(部・課など)ごとの分析まで実施しています。集団分析は義務ではありませんが、実施企業では標準的な取り組みになりつつあり、結果を職場改善につなげる前提で設計するのがおすすめです。
ポイント4:担当者の手が回らない
50人未満の会社では、総務や経理の方が労務を兼任しているのが普通です。規程づくり・案内・督促・記録保存・面接指導の手配をすべて自力でやろうとすると、他の業務を圧迫します。
「どこまで外部に任せ、社内には何を残すか」を最初に設計することが、負担を減らすいちばんの近道です。
各都道府県の産業保健総合支援センター(さんぽセンター)や地域産業保健センターでは、50人未満の事業場向けに医師の面接指導などの無料支援を行っています。まずはこうした公的サービスを調べてみる価値はあります。ただし利用回数や日程調整に制約があり、「必要なときにすぐ・継続的に」という使い方は難しいのが実情です。公的支援と民間サービスを組み合わせて考えるのがよいでしょう。
ストレスチェック以外の健康管理義務は「50人未満の会社の健康管理|法律上の義務一覧」で、体制づくりの土台になる「衛生委員会の立ち上げ方」もあわせてご確認ください。
まとめ——「人の確保」から逆算して設計する
ストレスチェック自体は年1回の検査で、手順どおりに進めれば専任の担当者がいない会社でも十分に対応できます。
カギは、実施者と、高ストレス者の面接指導をする医師をどう確保するか。この2つの目処が立てば、残りは順番に進めるだけです。
準備をいつから始めるべきかは、「ストレスチェック義務化はいつから?50人未満の会社の期限と準備スケジュール」で逆算スケジュールとして解説しています。あわせてご覧ください。
参考資料
\ 無料PDFガイド /
2028年義務化への備えは、無料ガイドから
従業員50人未満の会社向けに、2028年のストレスチェック義務化に「何を・いつまでに・どう準備すればいいか」を産業医がA4・9ページにまとめました。会社名とメールアドレスだけでダウンロードできます。
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