ストレスチェックを実施すると、一定の割合で「高ストレス者」が出ます。会社の担当者が戸惑うのはここからです。
「本人にどう伝わるのか」「会社は何をすればいいのか」「やってはいけないことは何か」——本記事では、高ストレス者への医師による面接指導の流れと会社側の実務を産業医が解説します。
高ストレス者とは——受検者のおおむね10%
高ストレス者とは、ストレスチェックの結果、自覚症状が強い、または自覚症状に加えてストレスの原因や周囲のサポート状況が著しく悪い、と判定された人です。
判定は会社ではなく実施者(医師・保健師等)が行います。厚生労働省の基準では、受検者のおおむね10%前後が高ストレス者の目安とされています。
ストレスチェック全体の手順は「50人未満の会社のストレスチェックのやり方」で解説しています。
厚生労働省の資料(令和4年「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」)でも、受検者に占める高ストレス者の割合は大半の事業場で5〜20%と報告されています。一方、高ストレス者のうち実際に面接指導を申し出る人は5%未満にとどまる事業場が多いことも指摘されており、後述する「申出しやすい環境づくり」が制度を機能させる鍵になります。
面接指導までの流れ——5つのステップ
| STEP 1 結果の通知 |
実施者から本人へ直接通知される。高ストレス該当者には面接指導の対象である旨と申出方法があわせて案内される |
|---|---|
| STEP 2 本人の申出 |
面接指導を受けるかどうかは本人の意思。結果の通知後、おおむね1か月以内に会社へ申し出る |
| STEP 3 面接指導の実施 |
会社は申出からおおむね1か月以内に医師による面接指導を実施する。オンラインでの実施も可能 |
| STEP 4 医師からの意見聴取 |
会社は面接指導の後、遅滞なく(おおむね1か月以内に)医師から就業上の措置に関する意見を聴く |
| STEP 5 就業上の措置 |
必要に応じて労働時間の短縮・作業の転換・就業場所の変更などを行う。措置が不要な場合もある |
費用はすべて会社負担です。面接指導にかかる時間の賃金についても、支払うことが望ましいとされています。
面接指導では何を確認するのか
面接指導は「問い詰められる場」ではありません。医師が確認するのは次の3点です。
- 勤務の状況——労働時間・業務内容・職場の人間関係など
- 心理的な負担の状況——ストレスチェック結果の内容と現在の状態
- その他の心身の状況——睡眠・食欲・体調・生活面の変化など
そのうえで、必要に応じて保健指導や受診の勧奨を行い、会社に対しては就業上の措置に関する意見を述べます。
本人にとっての面接指導は、不調が深刻になる前に専門家へ相談できる貴重な機会です。「面接指導=問題社員扱い」という誤解を放置すると申出が出なくなるため、制度の趣旨を社内に周知しておくことが大切です。
会社が守るべき3つのルール
| ① 不利益取り扱いの禁止 | 面接指導を申し出たことを理由とする解雇・降格・不当な配置転換などは法律で明確に禁止されています |
|---|---|
| ② プライバシーの保護 | 結果や面接指導の内容は機微な健康情報。取り扱う担当者を限定し、目的外に使用しない |
| ③ 記録の保存 | 面接指導の結果の記録を作成し、5年間保存する |
就業上の措置を行う場合も、医師の意見を聴かずに会社の判断だけで進めてはいけません。本人の了解を得るよう努め、不利益な取り扱いにならないよう慎重に進める必要があります。
申出しやすい環境をつくる
実務上の最大の課題は、高ストレス者のうち実際に面接指導を申し出る人がごく少数にとどまることです。「会社に知られたくない」という心理が最大の壁になります。
申出率を上げるには、次のような工夫が有効です。
- 申出の窓口を人事権のない担当者や外部(実施者)にする
- 実施者(医師等)からの申出の勧奨を活用する
- 面接指導とは別に、気軽に相談できる窓口(メール・チャット等)を用意する
- 経営層が「申出を歓迎する」姿勢を明確に発信する
なお、高ストレス者への面接指導と似た制度に、長時間労働者への面接指導があります。こちらは月80時間超の時間外・休日労働が基準で、詳細は「長時間労働者への医師の面接指導」で解説しています。
こうした面接指導の運用は、衛生委員会でも定期的に取り上げるとよいテーマです。立ち上げ方は「衛生委員会の立ち上げ方」で解説しています。
50人未満の会社における健康管理義務の全体像は「50人未満の会社の健康管理|法律上の義務一覧」で確認できます。
まとめ
- 高ストレス者は受検者のおおむね10%。判定は実施者が行い、結果は本人にのみ通知される
- 面接指導は本人の申出が起点。会社は申出からおおむね1か月以内に医師による面接指導を実施する
- 面接指導後は医師から意見を聴き、必要に応じて就業上の措置を行う
- 申出を理由とする不利益取り扱いは法律で禁止。記録は5年間保存する
高ストレス者への面接指導は、休職・離職を防ぐ「最後の砦」です。制度を形だけ整えるのではなく、申出が出やすい運用まで設計してはじめて機能します。



